「ふるさとに生きるということ――みかん農家・内田大晴さんが見つめる芳野の今とこれから」
6月24日、今回はみかん農家として、そして一児の父として芳野で暮らす内田大晴(ひろはる)さんにお話を伺いました。


Q1. 芳野にはいつから住んでいますか?
生まれてからずっと芳野で暮らしてきました。一度、大学進学のために4年間ほど宮崎県へ行きましたが、卒業後に芳野へ戻り、みかん農家としての生活を始めました。トータルで29年間芳野で暮らしていて、帰ってきてからは11年になります。
Q2. 芳野での暮らしの中で、「これがあるからここに住み続けたい」と思えるものは?
特別な理由というより、「自分が生まれた場所だから」「ふるさとだから」という思いが強いです。それに加えて、芳野の魅力を活かしながら、この地域を未来に残していく活動をしていきたいという想いもあります。

Q3. 芳野を“次の世代に引き継ぐ”ために意識していることは?
今意識しているのは、「芳野で仕事ができて、ちゃんと収入が得られる環境をつくること」です。この場所から見える景色(取材中に周囲を見渡しながら)を、しっかりと残していきたい。今はみかんを育てていますが、将来は違うものかもしれない。でも、何かを生産し、そこからちゃんとお金が得られる。それが持続的な暮らしにつながるはずです。人口が減っていく中でも、その“しくみ”を維持できる構造を作っていくことが目標です。


Q4. 具体的にどのような取り組みをされていますか?
私が経営する「株式会社内田Agri」は、3年前に法人化しました。現在は農地の拡大・集約を進めています。芳野は小さく分散した農地が多いので、それを集約することで作業効率が格段に上がります。面積が大きくなっても、一人でカバーできる範囲が広がれば、少ない人手でも対応可能です。こうした効率化を目指して取り組んでいます。
Q5. 芳野での生活の中で、日々感じる小さな幸せは?
子どもが些細なことに気づいて、それを伝えてくれるときに幸せを感じます。「鳥が鳴いてる!」「葉っぱ!」といった子どもの言葉に、当たり前になっていた自然の存在を改めて気づかされる瞬間があります。
Q6. 季節の移り変わりを感じる場所や風景には、どんな魅力がありますか?
春は小・中学校の桜がとてもきれいです。夏は梨の袋掛け作業が始まると「夏が来たな」と感じ、秋はみかんが色づいてくると秋を実感します。冬は霜がひどくて、それを見ると「寒いな、冬だな」と思いますね。


Q7. 芳野の特産品の中で、「これは語りたい!」というものは?
「たけのこ」か「みかん」で迷いますが、今回はたけのこを!掘るのも楽しく、食べても本当に美味しいです。3月から4月の限られた期間しか味わえませんが、特に収穫初期のたけのこの天ぷらは最高です。






(内田さんの農園では、たけのこ、みかんに加えて梨の生産も行っています。これから梨の収穫も始まります。)
Q8. 芳野えーるの活動の中で、特に印象に残っていることは?
「楽園化計画」が印象に残っています。みんなが全力で取り組んでいて、熱量がすごかった。初めての「オレンジカクテルナイト」(2016年実施の第2回目から青年部として参加)も、青年部としてしっかり関われた機会になり、やって良かったと思える経験でした。
(※楽園化計画についてはこちら、オレンジカクテルナイトについてはこちらをご覧ください!)


(左から寺本さん、宮本さん、内田さん)


Q9. 芳野えーるで今後やってみたいイベントや改善点はありますか?
芳野えーるの魅力は、地域の人だけでなく大学生など若い世代の視点で芳野を見つめられること。だからこそ、その視点から「こうしたらいいかも」と思ったことを、どんどん提案してもらいたいです。できるかどうかは別として、その声を聞くことが大切だと思います。

Q10. 地域の変化に対して、不安や期待はありますか?
私は変化に対して「期待」を感じます。むしろ、変化がないことの方が不安かもしれません。このまま何も変わらなければ、地域がただ終わっていくだけに思えてしまいます。でも、たとえ終わるにしても、変化の中で納得できる形で終えられるなら、それはそれでいいのかもしれません。とにかく、変化は必要不可欠です。期待しかありません。
取材の終盤、内田さんはこう話してくれました。
「若い人の声を聞き、活かしたい。芳野えーるや地域で活動したいと思う学生たちの中から、将来的にはこの地で働き口を見つけてもらいたい。今は農業で雇用する形ですが、今後はもっと可能性を広げていきたい。」
「農業は“好きなこと”というより“やりがいのあること”です。私たちが今している仕事は、長く続けていかないと意味がない。だからこそ、“持続可能な芳野”を目指していきたい。自分たちの代だけでなく、何代も先まで『この土地には意味があった』と思えるようにしたい。」
地域と真摯に向き合い、情熱を持って活動を続ける内田さん。その言葉からは、地域への深い愛情と未来への強い意志がひしひしと伝わってきました。私たちもこの取材を通じて、芳野という場所と改めて向き合い、その魅力を発信していく責任を感じました。内田さん、本当にありがとうございました。

作成者:2年 杠 真希